何時まで待っても真ん中の歯が出てこない、ということで来院されました。
左下の写真のように、左上の中切歯が1本足りません。
最初に述べたように、上顎の歯が欠損したままになっていると、頬や唇の筋肉の力やその他の作用で隣の歯はその隙間に向かってじわじと移動し、何時の間にか隙間も無くなってしまいます。
延いては上顎の発育が下顎よりもおくれ、左下のように噛合わせは反対の関係になっていました。
前歯部が狭窄しているので、右下の写真のように中切歯を頂点とした三角状の歯並びでした。
矯正前の状態


術前のX線像


正面からレントゲンを撮ってみると、左上の写真のように、右中切歯と左側切歯の間に挟まって左中切歯が埋伏していました。撮影方向が埋伏歯の歯冠と歯根の長軸と一致しているので、重なって白く三角形に写っています。
右上の側面からの頭部X線規格写真では、矢印が示すように鼻の真下で、歯冠部を上にして約45゜上方に向いて埋伏していました。
治療としては、上顎歯列弓を拡大し、埋伏している中切歯を引っ張り出して矯正することにしました。
最初の拡大


左上のような拡大床を装着。犬歯と大臼歯にバネを掛け、自分で着脱可能となっています。
正中部で床を縦に分割し、黄色い矢印の部分に拡大ネジが埋め込んであります。
拡大するには、口の外からワイヤーを右図の拡大ネジの真ん中にある1mm位の穴に挿入して、上顎前歯の切端から下顎前歯の切端の方向に動かすと、ネジが1/4回転ずつ回ります。
ニ段目の拡大


前記の拡大床では自分で外してしまうことがあるので、上図のような固定式のものに変えました。
1日に2回、1/4回転ずつ回し、所定の幅まで拡大します。この間、痛みがあれば中止、または少し戻して注意深く処置します。
上右の写真は、拡大後の状態です。
X線像


左上の写真は、治療前の上顎の写真で、左上中切歯が埋伏しています。
右上は拡大装置が装着された状態で、矢印が示すように拡大ネジは未だ広がっていません。


拡大ネジが拡がり、左上の写真の矢印が示すように上顎骨の正中縫合が開かれて、縦に黒い暗影が認められます。
上右の図では、第二小臼歯が生えてきて、装置に当たるので一度作り変えてあります。所定のところまで拡大したので上顎骨の分離した部分に骨が新生されるまでそのまま固定します。


拡大ネジにより、三角形の上顎の歯列弓は、アーチ型に拡大されました。
その後、上顎第二小臼歯と下顎第一小臼歯は抜歯しました。


更に上図のような装置で拡大を続け、左上中切歯のスペースも確保されました。
埋伏歯の牽引



さて、いよいよ埋伏歯の引っ張り出しです。
上口唇を翻転し、一番深い所を切開して埋伏歯を覆っている骨を除去します。
次に埋伏歯を露出させて、プラスチックのピンを接着します。このピンにゴムを掛け、装置に連結して引っ張り出します。上の左図参照。
歯は少しずつ引き出されますが、歯の方向が水平になった時が患者さんにとって一番辛い時です。上中図。
埋伏歯の切端が、常に口唇の裏側に擦れるので、唇が腫れ上がる事があります。
うがい薬や、場合によっては、抗生物質の投与が必要になります。
上右図のように埋伏歯の先が下向きになってくると楽になります。


埋伏歯が歯列弓の中に入ってくると、後は普通の矯正で仕上げます。上左図。
上右は、矯正後の状態で、上唇小帯と埋伏歯辺縁歯肉の手術がしてあります。
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